ピアニスト辻井伸行、新しいコンサートシリーズで高いハードルを設定

ピアニスト辻井伸行がバイオリニスト三浦文彰と手をつないで東京・サントリーホールの舞台に現れると、この日の昼の部に詰めかけた大勢の観客は二人のパフォーマンスを期待して暖かい拍手を贈った。

ピアノの柔らかい和音に導かれて、ヴァイオリンの静かな旋律が始まり、ヨハネス・ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番、通称「雨ソナ」(6月にリリースした初の共同アルバムの中の2曲のうちの1つ)が始まった。 31歳の彼は、生まれつき目が見えないが、幼い頃に母親がその才能を見出したという。 2011年のニューヨーク・カーネギーホールでの初演をはじめとするソロ・リサイタル、2013年のBBCプロムスでのBBCフィルハーモニーなど数々のオーケストラとの共演に加え、近年は「三浦との共演により、より親密な室内楽の楽しさを追求しています」と辻井。”

辻井と三浦が初めて出会ったのは、2015年に行われた一連のコンサートで、2009年に有名な国際コンクールで共に優勝した期待の2人–辻井はヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで金賞タイ、三浦は16歳でジョセフ・ヨアヒム国際バイオリンコンクールのハノーファーを優勝、史上最年少受賞者になっていた–が登場した時だった。

「最初はそれぞれの協奏曲のソリストとして、オーケストラを交えたプログラムで出会ったのですが、演奏旅行では一緒に食事をしたり、話をしたりしていました」と辻井。 アンコールでガーシュインの前奏曲から短い曲を一緒に演奏したこともありました」

「すぐに気が合うと思いました」と辻井さんは言い、その後、八ヶ岳の近くの川で一緒に釣りを楽しんだ。

10月5日のマチネーでは、CDに収録されている曲の中から、後半にもう1曲、辻井と三浦の共演をお届けしました。 セザール・フランクのヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調です。 辻井と三浦は初共演にこの名曲を選び、2016年から何度も演奏している。

「音楽の方向性や考え方が共通していると思います」と辻井は言う。 “大事なところは言葉で話し合うけれど、音で会話するほうが好き “ということですね。 三浦がこういう風に演奏したら、僕もそれに応えて演奏する。 そんな音楽的な対話が、リハーサルから本番にかけて変化し、回を重ねるごとによくなっていくんです」

ピアノの前に立つ三浦は、ほとんど辻井を見ずに演奏している。

辻井が指摘するように、2人のアーティストには、本物の演奏技術、クリアな音、そしてストレートなスタイルという共通項がある。 ある意味で、このコラボレーションによって、2人の音楽は深化したともいえる。 色や音色を生かしながら、印象的なテンポの変化や絶妙なタイミングで1つの音楽を共創し、互いに聴き合い、待ち合う。 信頼と尊敬をベースに、旺盛な音楽的対話はフィナーレに向けて大胆にヒートアップし、聴衆の熱狂的な拍手が沸き起こる

10/5 夜公演は、規模を拡大し、さまざまなコラボレーションを展開する。 辻井と三浦は、チェンバロ奏者の曽根麻矢子、三浦文彰の父でヴァイオリニストの三浦章宏といったベテラン奏者に加え、ソロや室内楽で活躍する若手アーティスト約20人が新たに結成したアーク・シンフォニエッタで演奏します。

三浦文彰のウィーンでの師であるリトアニア出身のヴァイオリニスト兼指揮者ジュリアン・ラクリン指揮によるモーツァルトのディヴェルティメント、ラクリンと弟子の三浦がソリストを務めるバッハの二重バイオリン協奏曲ニ短調のハイテンションな対位法のアンサンブルと続き、三浦と共に辻井がステージに登場します。

最後に、ショパンのピアノ協奏曲第1番をピアノと弦楽オーケストラのために編曲したものを、辻井がソリストとして、三浦が指揮者として初めてアーク・シンフォニエッタで演奏した。 ヴァイオリニストとして辻井と共演するときと、指揮者としてオーケストラのメンバーにどう伝えるかは別物である。 辻井の演奏を背後から感じ、次の瞬間にどう弾きたいかを正確に把握しながら、三浦はオーケストラをリードし、音を出していくことを心がけた

演奏は辻井のペースで進み、ピアニストは室内オーケストラを聴きながら適当に反応する。

このコラボレーションは、辻井のことを誰よりも理解している指揮者が室内オーケストラを効果的にリードし、辻井が各奏者と関係を深めることで、よりインタラクティブな演奏が可能になるという大きな可能性を示唆するものであった。

演奏が終わると、辻井と三浦は腕を組んで深々と頭を下げる。

ヴァン・クライバーンの金賞受賞から10年、辻井は国内外からますます注目されるようになった。

10月末から11月初旬にかけては、ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演に協力する。「新しい曲に挑戦します」と辻井は語る。 オーケストラとの共演では、フランツ・リストのピアノ協奏曲第1番を初めて演奏する。 辻井は子供の頃から耳学問で新しい作品を学んできた。 録音を聴きながら、「作品が完全に自分の体に入る」まで練習する。 「

11月下旬から12月上旬にかけて、フランスの珠玉の作曲家と自作曲を演奏する「ピアノ×アート」に出演する。 「観客を五感で感じるんです。 どんな会場でも、演奏する気持ちは同じです。 私の音楽を聴いて楽しんでいただけることが、何よりの喜びです」

中学生の頃、サントリーホールでロシアのピアニスト、エフゲニー・キッシンのコンサートを聴いた辻井。

「彼のわずかな音が、ホールの奥まで届く美しさに感動しました」

辻井の人生において、ピアノは常に存在するものだという。 言葉よりも音で表現したいんです」と語る。 “もしピアノをやっていなかったら、今の自分はなかったでしょう。 ピアノは自分を表現できるものなのです」

辻井伸行は10月31日から11月7日まで、ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団と日本各地で共演する予定です。 11月21日から12月8日まで、「ピアノ×アート」コンサートを全国で開催。 詳細はavex.jp/tsujiiをご覧ください。

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KEYWORDS

ピアノ, クラシック音楽, 辻井伸行, 三浦文彰

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