基底核の尾状核と側坐核にはGABA作動性の投射ニューロンがあり、ネズミでは線条体の全ニューロンの約90%を占める (Gerfen, 1992; 2004; Medina, 2008b; Parent and Hazrati, 1995a; Reiner et al, 1998). 前述のように、マウスのデータから、線条体の投射ニューロンの全てではないにしても、そのほとんどがvLGEに由来することが示されている(Marín et al.、2000;Stenman et al.、2003a)。 しかしながら、現時点では、線条体のいくつかのニューロン亜集団がdLGEに由来する可能性を排除できない(例えば、いくつかのパッチニューロン、下記参照)。 線条体の投射ニューロンには2つの主要なサブタイプがあり(図7.7A)、その半分はGABAとサブスタンスP/ダイノルフィン(GABA/SP/DYN)を、残りの半分はGABAと神経ペプチドエンケファリン(GABA/ENK)を共有している。 しかし、サブスタンスP、ダイノルフィン、エンケファリンの組み合わせを持つ投射ニューロンの例もある(これは側坐核よりも尾状核で起こる頻度が低い;Gerfen, 2004; Medina, 2008b; Reiner et al.、1998でレビュー)。 この2種類の投射ニューロンは、別項で説明するように、その投射と機能が異なっている(図7.7B)。 例えば、尾状核のSP含有ニューロンは主に淡蒼球の内節と黒質に投射し、随意運動の促進に関与し、ENK含有ニューロンは淡蒼球の外節に投射し、不随意運動の抑制に関与する(図7.7B)。 サブスタンスPやエンケファリンを含む線条体投射ニューロンが、異なるLGEサブドメインに由来するのか、あるいは同じサブドメインで異なる瞬間に由来するのかについては不明である。 興味深いことに、これら2種類の投射ニューロンの分化は、SP含有ニューロンの場合は転写因子Ebf1(Garelら、1999;Lobosら、2008)、ENK含有ニューロンの場合はIkaros-1(Agotonら、2007;Martín-Ibañezら、2010)が関わる異なる遺伝子カスケードとネットワークにより制御されている。 ハンチントン病では、これら2種類の線条体投射ニューロンが異なる時期に死滅し(ENKニューロンはSPニューロンよりも早く死滅する)、このことは、疾患の異なる段階における明確な運動障害と相関している(Reinerら、1998による総説あり)。 この2種類のニューロンの分化に関わる遺伝子制御プログラムの研究は、これらの違いの理解に役立つと考えられる。